『可愛い!?』

その1



キリ番5678番代理ゲットの上杉ハジメさまへ捧げます。
どうぞ貰ってやってくださいませ。

「こら、デューラ危ないだろ!!」

エバが食事の支度をしていると後ろからデューラが抱きついてくる。

「なんだよぉ〜いいだろ。」
「おとなしく座ってろよ、デューラ。」

エバは纏わりついているデューラを引き剥がすと、食事の支度に戻る。

「ちっ、なんだよ。」

邪険に扱われたデューラは、すっかり拗ねてしまったが、ふと顔を上げ、
にやっと悪戯っぽく微笑うと、エバのシャツを捲り上げて、
剥き出しになった脇腹に冷えて冷たくなった手を当てた。

「うわっ、デューラ、止めっ...痛てっ。」

エバは逃れようとして動いた途端、持っていた包丁を取り落とし、指を押さえる。
かなり深く切ったらしく、血が溢れ出る。

「エバ!!」

デューラが慌ててエバの指を覗き込む。

「...っ。」

エバは痛そうに顔を顰め、傷口を水で洗い流した。

「デューラ!!」

エバはデューラを睨みつけるが、デューラはエバに怪我をさせてしまったことに
動揺してその場で固まっていた。

「エバ...悪かった。」

珍しくデューラが素直に謝る。エバを傷つけたことがよほど堪えたらしい。

「まだ、痛いのか?医者を呼ばなくてもいいのか?」

鬼畜で、サディストで、人を傷つけることをなんとも思っていないデューラも、
どうやらエバだけは別らしく、おろおろとうろたえてしまっている。
エバはそんなデューラを見て、怒るのも忘れておもわず微笑んだ。

「デューラ、落ち着け。もう血は止まったから、
あとは消毒して包帯を巻いていればすぐに直るさ。大丈夫だ。なっ?」

エバが血の止まった指をデューラに見せるとデューラはやっとほっとしたように
落ち着きを取り戻していった。

「エバ...。」
「なんて顔してんだよ、デューラ。」

しゅんとうな垂れるデューラを見てエバは苦笑する。
そしてエバは傷の手当てを済ませ、途中だった朝食を手早く作り上げると、
テーブルに運んだ。

「なぁ、デューラ。今日、買い物に付き合って欲しいんだけど、いいか?」
「買い物??何を買うんだ?」
「ルスカにな、ガイズのスーツを買ってきてくれって頼まれてるんだが、
どうにも俺はそういうのはよく分からなくてな。」
「あぁ?ルスカ...ってあの弁護士か。」
「ああ。」
「ガイズってのは誰だ?」
「誰だって、お前...。冤罪で終身刑をくらった少年がいただろ??
お前目をつけて何度もいたぶってたじゃないか!」

エバは呆れて問い返す。

「あぁん??あの小僧か。そうか、あの小僧の弁護士がルスカだったか。」
「あぁ。あの二人、今一緒に住んでるんだよ。で、裁判の手伝いをさせていて、
そのガイズもそろそろ一人前になってきたからお祝いにということらしいんだが、
ルスカは裁判が立て込んでて買いに行く暇がないらしくてな。
それで、俺に頼んできたんだが。」
「いいぜ。お前一人だと心もとないしな、俺様がつきあってやるぜ。」

珍しくデューラが快い回答を返す。

「ありがとう、デューラ。で、いい店は知ってるか?」
「なんだ、店も知らないのか?お前は...。」

心底呆れた口調でデューラは問いかえす。

「あはは。」
「しゃあねぇな〜。俺様行きつけの店でいいのか?」
「えっ...そこって高いのか?こんだけしか貰ってないんだけど。」
「それだけあれば充分だろ。」


食事が終わった二人は連れ立ってデューラ行きつけの洋品店に足を運んだ。

「う〜ん、どんなのがいいのか俺にはさっぱり分からねぇ。
お、これなんかいいんじゃねぇか?なぁ、デューラ。どうだ?」

さっきから店の中を我が物顔でうろついているデューラを呼び寄せると、
エバは選んだ服を見せる。

「おい、エバ...。」

デューラは一目見るなりあからさまにため息を吐く。

「な、なんか悪いのか?」
「お前センスないぞ!!いくらあの小僧でも、これはマズイだろ!!
かせっ、俺様が選んでやる!!」

そう言うとデューラは店内をぐるりと一周して一揃えのスーツを抱えて戻ってきた。

「これならあの小僧にちょうどいいだろうよ。」
「流石、デューラ。うん、やっぱりデューラについて来て貰ってよかったぜ。」
「当たり前だろ。俺様を誰だと思ってるんだ。当然だ。」

エバは清算を済ませると、その足でルスカの元に持っていった。

「エバ、持ってきてくれたのか、わざわざありがとう。」

そう言うとルスカは早速に中を確かめる。

「すごいじゃないか。これならきっとガイズも喜ぶよ、ありがとう。
流石はエバだな。エバに頼んでよかったよ。」
「お前、本気でそう思ってるのか?」

扉の影に隠れて見えなかったデューラが突然姿を現したので、ルスカは仰天する。

「な、なんだ、いたのか。」
「ふん。俺様がエバにつきあってやったに決まってるだろ。
第一エバにはセンスの欠片もないぞ?こいつの選んだ服のすごさといったら...。」

デューラは思い出したのか、またため息を吐く。
エバは居心地悪そうに苦笑する。

「ま、なんだ、そういうことなんだ。」

ルスカは開いた口が塞がらない。

「俺様が選んでやったんだからな!!感謝しろよ!!
んじゃ、エバ、帰るか。」
「ああ。じゃあな、ルスカ。」

そういうと二人は仲良く帰っていき、残されたルスカは呆然と立ち尽くしていた。

「あの、デューラが?ガイズの為の服を選んだって??信じられん。」

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