『初めて!?』


「なぁ、ルスカ。お前さっ、ガイズによくチョコレートを差し入れしてただろ?
その店をさっ、教えてくれないか?」

突然エバが尋ねて来たかと思うとおもむろにそんな話をしだす。

「チョコレート?ってお前食うのか!?」
「違う、違う、俺が食うんじゃなくって、その、ほら。」

珍しくエバが歯切れ悪く口ごもる。

「なんだ?」
「だからよ、もうすぐバレンタインデーだろ?
その、デューラがチョコレートを食いたいっていうから。」

エバは少し照れながら頭を掻く。

「はは〜ん。しかし、お前も変わったよなぁ〜だいたいあんなヤツのどこがいいんだ?
さんざん虐められたんだろう?」

ルスカは冷やかしながらもそう疑問をぶつける。

「うるさいなっ、なんだっていいだろ!!俺にもよく分からないんだからさっ。」
「しかも、お前が抱かれる方なんだろ?」
「なっ...いいじゃねぇか。俺達はそれがしっくりくるんだからよ。」
「まぁ、俺にはとうてい理解できんが、お前がいいってんなら、何も言わないさ。」

ルスカはそういうと肩をすくめる。

「もう言ってるじゃないか!」

「ははは、悪い、悪い。で、チョコレート屋だったな?」


エバはルスカに教えられたチョコレート屋に女性達が群がっているのを見て思わず
回れ右をしたくなったが、勇気を振り絞って店に入った。
そして、女性達の好奇の目に晒されながらもなんとかチョコレートを買うことに成功した。
「はぁ〜もうこんな思いは二度としたくないぞ。」
エバは帰り道でこっそりとつぶやいた。


「デューラ、ほら、チョコレート。」

エバは仕事から帰ってきたデューラに早速に戦利品のチョコレートを渡す。
綺麗にラッピングされたチョコレートの小箱を嬉しそうに受け取るデューラ。

「おぉ、買ってきてくれたのか?エバ!!」
「あぁ、かなり恥ずかしかったぞ。でも、お前の為だからな。」

デューラは嬉しそうに笑うと、エバを抱きしめる。

「エバ。嬉しいぞ。」

デューラは言うなりさっそくに包みを開け、チョコを取り出すと口に入れる。

「ほら、エバも食えよ。」

エバを招きよせると口に一つ放り込む。

「お、なかなか美味いじゃないか。なぁ、デューラ。」

エバが驚いたように告げる。

「あぁ、最高だぜ。」

デューラは初めてチョコレートを貰った少年のようにはしゃぎ、
エバは傍らで、それを満足そうに眺めていた。



<了>

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